三姉妹母ちゃんの日記

日常の雑記ブログ。たまに映画や本の話もします。

寄る辺なき時代の希望



寄る辺なき時代の希望 人は死ぬのになぜ生きるのか /田口ランディ

田口ランディの書く文章がとても好き。
この人の文は短い。迷いがない。
そのランディさんをもってしても、
難しいテーマ。生と死。
大きなテーマとして、
「人は死ぬのになぜ生きるのか」
というものがあり、
それに加担する形で
痴呆症
総合失調症のグループ
核と放射線汚染
などのテーマが書かれている。

当然、内容は重い。
まるで鉛を飲むような感じ。
それでも頭がぐるぐる回り、
考えるのがイヤじゃなかった。
というより考えてばかりいた。

なぜ生きるかについては、
ひとぞれぞれ答えがあると思う。

でも、人は生かされていると思う。
それはランディさんも書いていて、
私も納得したことだった。

エピローグの中で、
人が産まれるとき、
受精卵ができるときや、
赤ちゃんが産道を通るときのことが書いてあって、
とても興味深かった。
顕微鏡で受精卵が細胞分裂をしている様子は、
まさしく何かが宿るという状態らしい。
たったひとつの細胞が分裂を繰り返し、
時間をかけて「人」になっていく。
その時間が来たら、
狭く苦しい産道を通って外の世界に出ようとする。
母親の骨盤をぐいぐい開いて、
出ようとするそのパワー。
外の世界に出ても、
一人では生きられないのに、
出てこようとする。
そのとてつもないパワーを目の当たりにすると、
「なぜ人を殺してはいけないか」
という質問がひどくアホらしく聞こえる。

でも、「産まれる」ことと「死ぬこと」
は、誰も抗うことのできない不可抗力で、
産まれるパワーがあるように、
死ぬパワーもあるんだろうなと思う。
映画なんかでは手の力がふっと抜けて、
それが死の瞬間として捉えられるけど、
その瞬間が受精卵に何かが宿る現象の対極にある現象なんだろう。


妊娠がわかってもいないとき、
体ががんがん鳴るのを感じた。
人に話してもあまり信憑性もないし、
驚かれる。
でも、あれは遺伝子の音だったんじゃないかと
密かに思っている。

生と死についていくら考えても、
答えは出ない。
でも、この本は生と死について考える上で、
十分すぎるほど有益だった。
それでよかったんだと思う。
いつかランディさんに会ってみたいなあ。